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がん患者であるということ

10月28日(金)
 「いのちの授業」をやった小学校からは、授業を聴いた生徒から感想文が送られてくる。この感想文を読むことがある意味で「いのちの授業」をやることの中での一番の楽しみだ。自分の話したことがどのように受け止められ、どのような影響を生徒達に与えることが出来たのかそれを知る事は何よりも話すことの励みになる。

生徒に話した内容は自分自身に返ってくる。不確かな自分、思い惑う自分が生徒との関係の中で、生徒に話をすることの中で確実なものを見出していく。自己の中の不確かな思考も他者に話すことによって自己の確信へと変わっていく。不確かな自己が他者との関係の中で確実なものを獲得していくそういった過程が「いのちの授業」での生徒感想文の中で発見できる。

 揺るぎなき自己など存在しない。キルケゴールはいう「精神とは自己である。しかし、自己とは何であるか? 自己とはひとつの関係、その関係それ自身に関係する関係である」。自己が単体として存在するならば、一旦形成された自己は揺るぎないものとなりうるだろう。自己は自己自身の関係に関係することにすることによって自己であるから、その関係は自己との対話であって絶望や不安、思い惑いなどに満ちあふれている。自己とは確定的な存在への模索の過程である。

つまり「派生的な、措定された関係が人間の自己なのであって、それはそれ自身に関係する関係であるとともに、それ自身に関係することにおいて他者に関係するような関係なのである。」だからこそ自己は、自分で自己自身に関係することによって自己を措定するか、他者との関係において措定するかそのいずれということになる。だからこそひたすら揺れ動く存在なのである。

 がんになって「がんと共に生きる」という心境に達しているとは思っているが、それは決して確信として存在しているわけではない。外の選択肢がないということであきらめているだけなのかもしれない。また治療がうまくいかなければ絶望とか不安にさいなまれることもある。

絶望についてキルケゴールは「絶望することができるということは、無限の長所である。人間が精神であるという無限の気高さ、崇高さを指し示すものだからである。人間が動物よりすぐれている長所である。けれども絶望しているということは、最大の不幸であり悲惨であるにとどまらない・・・」と言っている。

がんになったという現実に対して絶望し、しかしその絶望を経ることによって人は自己自身を見出していく。今まで会社や世間に流されて生きていた事について、絶望によって今までの自己を対象化し、がんを抱えて生きていかなければならない自分を見出していくことになる。そしてそれを宿命として受け入れ、自己自身を見出していく転機としていくことが出来るのである。

 多くのがん患者の生き方を交流会で聴く機会を持ってきた。彼らががん宣告を受け、長い治療を経てから、交流会に出て自分自身の事を語ることが出来るまでには多くの困難な道程があった。その過程については、死期を迎えた人の感情の移り変わりとかなり近いものを感じた。死と終末期研究の先駆者、エリザベス・キューブラー・ロスは「死期を迎えた人は典型的に、拒絶、怒り、交渉、抑うつ、受容の5つの感情段階をこの順番で経験する」と語る。

この過程は、がんを宣告された多くの患者も同じようにたどる。しかしそれは一方向的なものではなく、怒りから受容へ、そしてまた怒りに戻ったりする。人間の心は割り切れない。がん患者であることを受け入れ、がんと共に生きるのだと言っていた人が、重いうつ病になったりすることもある。

 最初はがん宣告されても、間違いではないかとがんになったという事を認めようとしない。次に「何で、私ががんにならなければいけないのか、自分は死でしまうのだろうか?」と、怒りが湧いてくる。そして最終的には「なんでなったか悩んで、苦しんでも、がんであるという現実は何も変わらない。なってしまったものは、受け入れるしかない」といった受容に至る。

確かに受容の感情に至り心穏やかにがん治療に取り組んでいければそれにこしたことはない。しかし人間の心は揺れ動く。がんを受容すると同時に、がん患者であり続ける自分ががんと共存ししながら、自己自身の新たな生き方を見出してできれば、心の安定を獲得することができるだろう。結局今を自分自身納得してどう生きるのかが問題なのだ。

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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Author:yosimine
がん治療とは長く細い道を辿ら
なければならない。その先に希
望があると信じながら。

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