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『シーシュポスの神話』と囚人労働

2月20日(金)
「神々がシーシュポスに課した刑罰は、休みなく岩をころがして、ある山の頂まで運び上げるというものであったが、ひとたび山頂まで達すると、岩はそれ自体の重さでいつも転がり落ちてしまうのであった。無益で希望のない労働ほど恐ろしい懲罰はないと神々が考えたのは、たしかにいくらかはもっともなことであった」(新潮社『カミユ全集2』P190)

カミユは、この本の中で、ギリシア神話に寓してその根本思想である“不条理の哲学”を理論的に展開追究した。彼の他の作品ならびに彼の自由の証人としてのさま様々な発言を根底的に支えている論理がこの本の中で展開されている。

§ このシーシュポスの労働をについて考える時、思い浮かぶのは明治時代に行なわれていた空役と呼ばれる無意味な労働を強制する刑罰労働が、実際に行なわれていたことである。明治20年、兵庫県及び大阪府で相次いで罪石の制度が採用された。これは重さ6貫目から17貫目(22キロないし64キロ)の石を背負わせて1日2時間歩行させたというものである。

当時の大阪府知事がイギリスにおける空役の知識を持ち帰り採用した。英国では19世紀半ば過ぎまでこういった労働が行われていた。受刑者を横並びにして一斉に大型の踏み車(treadmill)を踏ませたり、水汲み小屋(pump-house)で手車を回させた。

この罪石によって「背肉剥落し流血淋漓往々頚骨屈曲して復たび伸びず、終に死する者あるに至れり」という惨憺たる状況を呈した。

また幾つかの監獄においては、敷地の一角に大きな穴を掘り、それを再び埋めるという作業を朝から晩まで繰り返し行なわせたという資料もある。

§ この罪石の採用の直接的契機は山県有朋の通達による。明治時代に絶大な権力を振るった首相山県有朋が内務卿当時(明治18年)監獄行政に関する秘密通達を発した。「そもそも監獄の目的は懲戒にあり。・・・懲戒駆役耐え難きの労苦を与え、罪囚をして囚獄の恐るべきを知り、再び罪を犯すの悪念を断たしむるも之監獄本文の主義なり」とする苦役懲戒主義を宣言した。

この苦役懲戒主義の行刑思想は、囚人による北海道開拓を提案した伊藤博文に引き継がれていく。秘書官金子堅太郎の復命書には次のように書かれている。

「彼らはもとより暴戻の悪徒なれば、その苦役に堪えず斃死するも、尋常の工夫が妻子を残して骨を山野にうずむるの惨状とことなり・・・囚徒をしてこれを必要の工事に服せしめ、もしこれに堪えず斃れ死して、その人員を減少するは監獄支出の困難を告ぐる今日において、万止むを得ざる政略なり。」

§ このようにして冷酷無惨の北海道における行刑が実践されていく。幌内炭鉱外役所での落盤、ガス爆発による囚人の死傷者数は、死亡81名、負傷3301名に達している。

網走工事改作道路では、投入された1500人の囚人のうち212名が死亡している。この道路は旭川から網走に向かう道路で、明治24年4月に開始し、12月までに北見峠から網走の約161kmを人力で完成させるという突貫工事で、人跡未踏の原始林や原野を人力のみで切り開き、朝早くから夜遅くまで働かされ、栄養も十分にとれないため、死亡者が相次いだ。この労働に従事したのは西南戦争で捕らえられた士族や加波山事件、秩父事件に参画した思想犯が多く含まれている。

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この中央道路の経路中にはその犠牲者を弔う慰霊碑が各地に建立されている。工事の際死亡して路傍に埋められた墓標亡き囚人は、300名以上という。彼らを縛っていた鎖だけがその上に残されてあり、これを鎖塚と呼ぶようになった。

§ 囚人の人権をというと「犯罪者に権利など必要ない」と言われるかもしれない。しかし、囚人の権利の状況は、一般市民の人権状況を映す鏡だと言われている。最も抑圧されている人の権利を獲得するということを通して、全ての人の権利を拡大していくことが出来るのではないかと思う。
(参考資料:緑風出版『監獄法改悪』)

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