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映画 『太陽はひとりぼっち』

3月21日(土)
『太陽はひとりぼっち』という映画をムービープラスというチャンネルでやっていた。3、40年前に見た映画だ。その頃ミケランジェロ・アントニオーニの映画にはかなり興味を持っていた。今見たらどういう感じ方をするか見てみようと思った。製作から既に46年経っている映画が今どのように自分の中で消化されているのだろうか全く分らなかった。

ミケランジェロ・アントニオーニは昔から好きな作家だった。彼は60年の『情事』がカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞した。『太陽はひとりぼっち』『赤い砂漠』など、現代人の孤独や絶望感を描くのが特徴である。最初に見たのが『赤い砂漠』でモニカ・ヴィッティが印象的だった。次に『欲望』を見た。バネッサ・レッドグレーブやジェンバーキンが出演していてよく覚えている。

c0073737_20565945_convert_20090321002001.jpgSTORY:三年越しの恋に終止符を打ったヴィットリア(モニカ・ヴィッティ)は、株式仲買人のピエロ(アラン・ドロン)という青年と恋に落ちる。しかし彼女には、二人の間に横たわる大きな溝が感じられるのだった……。

『太陽はひとりぼっち』という題名の付け方が最初から気に入らなかった。映画会社はアラン・ドロンの『太陽がいっぱい』が流行ったのでそれにあやかって付けたのだろうが、全く異なる内容に似たような名前をつけるという感性は信じられない。

そもそも原題のL'Eclipseは「日蝕」という意味だ。この題名が何を意味するか、金融恐慌というめったにない時代背景を表しているのか、主人公の心の欠落部分を表しているのか幾つかの解釈が成り立つだろう。

『赤い砂漠』のモニカ・ヴィッティの表情が素晴らしかった。それは『太陽はひとりぼっち』でも全く変わらない。心の空虚さや心の陰影を顔の表情で表している。今彼女のように表情だけで複雑な心の機微を表現出来る女優は少ないだろう。その意味で相手役ドロンは対極的な存在だ。裏も表もない。顔は整っていても、どこか軽薄で冷淡で底が浅く粗暴な現代人をうまく演じている。この二人の関係は、だからこそ一つの結果を導き出してくるのだ。

この映画の最大の特徴は風景描写が時代の心象風景と主人公の心の綾を表現している点にある。乾いた都会の風景を淡々と映し出す。奇妙な建造物、殺伐とした道路、主人公の女性が住むマンションのエントランス、横断歩道辺りの荒涼たるアスファルト、溜まった雨水を流れ出る樽など無味乾燥で寂しい風景が時代と心の寂寥感を滲ませている。

二人が散歩した公園もビルの街並も、建てかけの建築物のある道も、今日も少しも変らずにそこにある。今日のどこが過ぎ去った昨日と違うのか。ヴィットリアは昨日と同じように、今日の中にまた歩みはじめる。その中になにか新しいものがあるのか。愛は新しく始まるのか。無味乾燥な風景は厭世的な気分を漂わせ、陰影が不安と恐怖をかきたてる。その中に何も変わらない自己を見出すほかなかった。もはや2人が会うことはないだろう。始まりは終わりを意味するものでしかなかった。

沈黙し、感じ、悟り、去る女と、その心を何も理解できない男の対比が鮮やかに描かれる。最後、誰もいないまま暮れてゆく町並みの情景描写が、夕暮れの限りない無機的な美しさとその裏にある苦しいほどの寂しさを表し、2人の結末を示していた。

「皆が損したお金はどこへ行ったの?」ビィットリアはアランに聞く。1929年大恐慌での株大暴落のパニックの中で貨幣が消失したわけではない。アントニオーニはこの映画を1962年に作ったが、今日まさに表れている資本主義が行き着く先について問題提起したのだ。拝金主義の社会の崩壊を示唆したのだろう。不信感に満ち、ドライで、空虚で、浅はかで、無意味な喧騒が終止符を迎えたのだ。

さらに通行人が見ている新聞が大写しにされる。米ソの核開発競争が大きな見出しで書かれている。核戦争という究極の絶望に至っては、この絶望的な社会の中で、主人公は何を心の拠り所としていけばいいのか。「生」を感じられないアンニュイ感。倦怠の日々は少しも姿をかえはしない。「愛の不毛」それは生きる意味を見出せない社会の不毛の一つの表れなのだろう。

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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