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時代小説の面白さ(藤沢周平)

9月5日(土)
宮部みゆきの次は藤沢周平だった。彼の時代小説は今まで一冊も読んだことはなかった。それにもかかわらず映画は全て見ている。「たそがれ清兵衛」「隠し剣・鬼の爪」「蝉しぐれ」「武士の一分」「山桜」とそれぞれ興味深く見た。

下級武士の日常生活がリアルに描かれ、その時代の武士の知らなかった面が見えてくる思いだった。藩の内紛や上下関係の厳しさなどサラリーマン世界を思い出させるような場面も出てくる。

カクシケン_convert_20100605122029 最初に読んだのが『隠し剣弧影抄』とそのシリーズの『隠し剣秋風抄』だった。この本はY氏が沖縄に持って来て読んでいたので読もうと思った。「邪険竜尾返し」「臆病剣松風」「暗殺剣虎の爪」などの表題にあるように「必殺技」を持つ者達を描いた短編集だ。

主人公たちは、技を持っていることを明らかにしていない。しかしどこからともなくその剣の腕が知られ、その剣技故に悲運を背負うことになる。しかし紆余曲折を経ながらもその必殺剣によって自らの命と名誉を守ることが出来たといった内容になっていて、読み終わった後の爽快感がこの小説の読み応えといってもいいだろう。

主人公は藩の下級武士で日々の生活の維持のため、城勤めの合間を縫って百姓や内職の仕事をしている。そういった生活を抱えながら剣の腕を買われ藩内の政争や自家の存続ために、身を犠牲にしなければならない悲哀が切々と描かれ心に染みる内容になっている。

また、架空の城下町の描写も細かい。藩名が「海坂(うなさか)藩」と出て来る。この「海坂藩」は架空の藩ではあるが、作者である藤沢周平の生まれ育った地である山形県鶴岡市、江戸時代の出羽国庄内藩がベースとなっているといわれているということもあって、とても架空とは思えないほど、季節ごとの自然や町、城下の様子などの描写が巧みだ。

藤沢周平の時代小説には幾つかのシリーズ物がある『用心棒日月抄』シリーズは4冊ある。東北の小藩を諸般の事情で脱藩し江戸で浪人暮らしをする青江又八郎と、その周辺の人物を描いている。

裏店の薄汚れた長屋に住み、口入屋からの紹介で用心棒の仕事を貰って生活している。用心棒の仕事がない時は土方とか沖仲仕でも何でもやらなければ生活できない。その用心棒の仕事で遭遇する様々な事件や人間関係が、巧みな剣さばきによって事件を解決していくことを背景にしながら、描かれている。

61c0FDWcauL__SL500_AA240_.jpgもう一つのシリーズものは『彫師伊之助捕り物覚え』で3冊出ている。主人公伊之助は、仕事熱心な親方の下で彫り師を本業としている。しかし元腕のいい岡っ引きだったという所を買われて、昔の知り合いの同心から殺人事件の捜査の手伝いを頼まれる。手伝いといっても、根が後には引けない性格のせいで、どんどん事件にのめり込んでいき、結局中心になって事件解決まで担ってしまうのだ。

藤沢周平は解説の中で「伊之助は、元凄腕の岡っ引きで、逃げた女房が男と心中したという過去の影を引きずっており天真爛漫な岡っ引きではない。この伊之助は岡っ引きが職業ではない。ハードボイルドの私立探偵の感覚です」と書いている。

舞台は本所深川を中心として下町の人たちの生活をベースに商人、職人、小料理屋、飲み屋など多種多様な職業の人たちが登場し飽きさせない。本所深川の地名が事細かに出てくる。

藤沢周平が解説で「岡本綺堂は明治の作家だったからまだ江戸が残っていてそのままの風景描写が出来た。しかし今の時代江戸を書くことはかなりの困難がある」と言っているが、事細かに本所深川の地名が登場する。

今でも残っている地名がかなりあり、吾妻橋、新大橋、永代橋や竪川、小名木川などは今もあり、本所、石原、緑、菊川、森下、深川、清澄、木場などの地名も残っている。そういった意味で江戸時代の時代小説でも登場人物の動きを距離感覚を含めて追うことが出来る。

子供の頃八丁堀に住んでいた。その頃の八丁堀は東京駅から10分の地であり、ビルに囲まれた所だった。住居はビルの中で昔の面影などは当然なかった。八丁堀といえば捕物帖で有名な「八丁堀の旦那」と呼ばれた江戸町奉行配下の与力・同心の町だった。与力は徳川家の直臣で、同心はその配下の侍衆で、その下に岡っ引きが就く。北町奉行は東京駅の傍にあり、南町奉行は有楽町駅の傍にあったいうから、その関係で八丁堀が選ばれたのだろう。

八丁堀に住んでいたのは小学校6年からで、小学校は京橋にあり、中学校は霊岸島にあった。新亀島橋を渡って中学校に通っていた。霊岸島は第三代将軍徳川家光の時代に埋め立てて作った人工島で、造成完了は寛永元年(1624年)だという。そういった地名が出てくると懐かしい気がする。時代小説の捕物帖では欠かせない地名だ。藤沢周平に小説にも何度か出てくる。

藤沢周平の時代小説は武家を扱っても、町人を扱ってもどちらも面白い。『たそがれ清兵衛』『麦屋町昼下がり』など武家世界の理不尽な掟に翻弄される下級武士の苦衷がしみじみと伝わってくる。

町人を扱ったものは市井の生活の苦労が行間から滲み出てくるようだ。働けど暮らしは楽にならない。裏店の柱が曲がったような長屋に子供を何人も抱え、男は物売りに出かけ、妻は内職をしてもかすかすの生活を維持するのに精一杯の生活を続けていかざるを得ないといった江戸の町人の日常が鋭い筆致で描かれている。そういった中で江戸情緒をかもし出しながら、義理人情を織り交ぜながら、物語が展開していく。

全てが読み応えがある。短編小説が中心であることもあって、非常に読みやすく次々と読みこなしていった。図書館に25冊位あるが、20冊ほどは読んだ。後5冊で読み終わる。次は誰の小説に挑戦するか楽しみだ。

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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