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石田衣良 『4TEEN』

2月11日(木)
石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』を7巻まで一気に読んでしまった。主人公マコトの優しさと、人を思いやる心は、人がお互いを蹴倒しあい自分のことだけを主張しあっている世の中で、一陣の涼しい風が頬に当たるような爽快感を感じさせる。

41G1_convert_20100211172517.jpg石田衣良の『4TEEN』という本があった。これを次に読む事にした。以前読んだ『40フォーティー・翼再び』も面白かったが、14歳の子供たちをどのように捉えるのか興味があった。「いのちに授業」の対象となっている小学校6年生は12歳、14歳の子供たちとの共通点があるかもしれない。この小説はテツローという主人公とダイ、ジュン、ナオトの3人の仲間が繰り広げる物語だ。場所は月島、主人公たちは月島中学の2年生。

この小説の中で特に印象に残ったのは「月の草」という短編だった。「月の草」の内容は、登校拒否になった女生徒立原ルミナをめぐる物語だ。月島中学では登校拒否になった生徒に週2回学校通信や宿題のプリントを届ける事になっていた。たまたまテツローのマンションがルミナの住んでいるマンションの隣だということで彼が配達する事になった。彼女は摂食障害で拒食症と多食症を繰り返している。身長は150cm、体重は41プラスマイナス16キロ。

最初は太っている自分を見せるのを恥ずかしがって姿を表さなかったが、表れた時にはがりがりに痩せていた。何回かプリントを届けにいくうちルミナは段々とテツローに心を開いてくる。今度は猛烈に食べ始める。やがて再び登校する事になった。その最初の日、テツローはルミナと一緒に学校に付き添っていく。途中で何時も一緒行く仲間3人と待ち合わせる。テツローは三人に、彼女のことを付き合っているんだと紹介する。

最初は緊張していたようだが、ルミナは普通に授業を受ける。周囲の視線もそれ程気にならないようだった。事件が起こったのは昼休みだった。ルミナはかばんの中からジャンボサイズのシュークリームを取り出し、次々と口の中に入れ始めた。6個食べ終わり周囲を見回すと「冷蔵庫で凍らせた針のようなクラスメートの視線」にさらされていた。

それからルミナはその昼休み2度目の致命的な失敗を犯してしまった。今食べたばかりのシュークリームを全て机の上に吐き出してしまったのだ。男子生徒は息を飲み、女子生徒の何人かは悲鳴を上げてその場から飛び下がった。

ここからが石田衣良の人の本当の優しさとは何かを訴える重要な場面になる。テツローはしびれたように固まってしまった。

最初に動いたのはダイだった。「立原だいじょうぶか?おれもたまに食い過ぎると胃の調子がおかしくなることがある」といいながらルミナの口を首にかけていたタオルで乱暴にぬぐってやる。

ナオトはジャージの上着を持って机に駆け寄ると、生クリームとシューの切れ端が混ざる白い山にかぶせ、さっさと覆ってしまう。机の上をぬぐうように器用に丸め込むとそれをゴミ箱に捨てに行くため教室を出て行った。

ジュンはテツローの肩に手おく。「先生には連絡しておく、彼女を家まで送ってやれよ」そして「彼女にいってくれ。明日の朝、また西仲通りで待ってるって。一緒に学校に行こうってな」と付け加えた。

「ぼくは言葉にならない程うれしかった。ジュンの台詞とダイとナオトの行動が臆病なぼくに勇気を与えてくれた。」立原ルミナは次の日、皆と一緒に学校に行った。未だ拒食症と多食症を繰り返し体重は増えたり減ったりしているが何とか学校には通っている。

人はいかにして他人の痛みを受け止める事が出来るのか。ナオトは早老症(ウエルナー症候群)という病気だ。人の何倍もの速度で年を取っていく病気で、そのせいで髪が白くなり、顔や手や首筋にしわがある。自分の痛みを人は中々他人の痛みとして受け止めることは難しい。しかしナオトはあたり前のように行動に移していく。

ダイは太っていて大食いだ。だから多食症の人の心が理解できるのかもしれない。しかしジュンもそうだが、4人の仲間意識が仲間の1人の大切な人が困っている状況を見過ごせないという強い思いがあったのだろう。

人との絆の大切さ、他人への優しさ、思いやりの心こういったことは教育で与えられるものではない。それこそ仲間とのつながりの中でお互いを認め合う心の中で成長していくのだろう。

いじめにあったり、自分の特異な性癖のため登校拒否になる生徒が多い。登校拒否生徒は全国の中学校で50万人いるという。同じクラスでただ一人でもその人を支えてくれる友人や仲間がいれば登校拒否にはならなかっただろう。全くの孤立感が人を一切の人間関係から切断していき、そして引きこもりにまで至ってしまうのだ。

『4TEEN』に登場する4人は全くの普通の中学生である。しかしその感性は驚くほど純粋だ。こういった感情は誰でも思っているはずだ。だけど中々それが素直に表現され発揮されない。

「いのちの授業」のアンケートで書かれるいのちについて、他人との関わりについての言葉には溢れるばかりの豊かな感性が表現されている。そういった気持ちが具体的に他人とのかかわりの中であたりまえの行為として発揮されてくれば、学校やクラスの人間関係も大きく変化してくるだろう。思いを行動に移すのはなかなか出来ることではないが、それが当然のこととして出来る環境が必要なのだろう。

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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