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村上春樹 『海辺のカフカ』

6月6日(日)
村上春樹の小説は、『ノルウェイの森』を面白く読んだ記憶がある。『海辺のカフカ』は入院していた時に、病院の図書館にあって借りて読んだものだ。目の前に今話題の『1Q84』の分厚い本が3冊ある。もちろん私が買ったものでなく、息子が買って読み終わったから読んでいいよと持ってきたものだ。しかしこの分厚い本3冊を読むには少しばかり気合が必要だ。

ウォーミングアップのため『海辺のカフカ』の感想でも書こうかと思ったが、記憶があまりはっきりしないので、とりあえず、今回はこの小説から、この物語の底にある考え方のような文章を引用することにする。

この小説で強く印象付けられたのは、物語の中に出てくる喫茶店でいつも演奏が流れているベートーヴェンのピアノ3重奏『大公』という曲だ。マスターは「この曲はルーピンシュタイン(P)、ハイフェッツ(V)、フォイアマン(C)の演奏でなければ駄目だ」という。

退院して早速レコード屋に行った。しかしハイフェッツが演奏しているとなると、かなり昔なのでLPでもモノラルしかない時代だろうし、CDで復刻している可能性はあまりないと思いながら買いに行った。レコーディングは1941年だったが、何とちゃんと復刻されてCDで発売されていた。よほどの名盤だったのだろう。かなり気に入ってその頃しょっちゅう聴いていたものだ。だから今でもこの曲を聴くと『海辺のカフカ』を思い出す。

カフカ_convert_20100607003907 物語は15歳の少年を主人公として展開する。
15歳の誕生日を迎える真夜中、田村カフカという少年が独り家を出て、夜行バスで四国へ向かう。目的は、たった独りで生き抜くこと。四国という以外目的地も、何をするかも決まっているわけではない。

同時もう一つの物語が進行する、ナカタさんという中野区に住む記憶を持たない老人がいる。彼の周りでは不思議な事件が起こる。彼もまたやはり東京から四国へ向かう。戦時中、山梨の山中で奇妙な児童集団失神事件が発生した。ほとんどの子供が通常の意識を取戻した中で、一人だけ最後まで全く記憶が戻らない男の子がいた。それがナカタさんである。

二人が向かったのは高松だった。二人は市内の私設図書館の女性館長との関わりを持って行く。この館長が二つの並行する物語を束ねる要になっている。

『海辺のカフカ』からの引用

「ある場合には運命というのは、絶え間なく進行方向を変える局地的砂嵐に似ている。君はそれを避けようと足取りを変える。そうすると嵐も君に合わせるように足取りを変える。」

「全ては想像力の問題なのだ。僕らの責任は想像力の中から始まる。イエーツが書いている。夢の中から責任は始まる。想像力のない所に責任は生じないのかもしれない。」

「人が運命を選ぶのではなく、運命が人を選ぶ。それがギリシャ悲劇の根底にある世界観だ。ギリシャ悲劇において、ぼくらはメタファー(隠喩)という装置を通してアイロニーを受け入れる。そして自らを深め広める。自分が選んだと思っていることだって、実際には僕がそれを選ぶ以前からもう既にそれが起こると決められていたことみたいに思えるんだよ。」

「僕がさらにうんざりさせられるのは想像力を欠いた人々だ。T・S・エリオットの言う<空ろな人間たち>だ。その想像力の欠如した部分を、空ろな部分を、無感覚な藁くずで埋めて塞いでいるくせに、自分ではそのことに気づかないで表を歩き回っている人間だ。そしてその無感覚さを、空疎な言葉を並べて他人に無理に押し付けようとする人間だ。

・・・想像力を欠いた狭量さ、非寛容さ、一人歩きするテーゼ、空疎な用語、簒奪された理想、硬直したシステム。僕にとって本当に怖い物はそういうものだ。・・・想像力を欠いた狭量さや非寛容さは寄生虫と同じなんだ。宿主を変え、かたちを変えて何処までも続く。そこには救いはない。」

村上春樹のインタビューから

「世界の近代文明というのは自己表現が人間存在にとつて不可欠であるということを押しつけているわけです。教育だって、そういうものを前提条件として成り立っていますよね。まず自らを知りなさい。自分のアイデンティティーを確立しなさい。他者との差違を認識しなさい。そして自分の考えていることを、少しでも正確に、体系的に、客観的に表現しなさいと。これは本当に呪いだと思う。だって自分がここにいる存在意味なんて、ほとんどどこにもないわけだから。タマネギの皮むきと同じことです。一貫した自己なんてどこにもないんです。」

「物語は説明を超えた地点で表現している。物語は、物語以外の表現とは違う表現をするんですね。それによって人は自己表現という罠から逃げられる。物語という文脈を取れば、自己表現しなくていいんですよ。物語がかわって表現するから。」

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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