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がんとの闘い

12月16日(日)
 がんとの闘い
 雨の寒い日は過ぎ、この3日間は晴天が続いている。朝の短い時間だが朝日の鮮やかな橙色が窓を染めている。病棟の窓から見る景色は穏やかに晴れ渡り、雪を被った富士山が雄姿を窓に映し出している。日曜日特有の静かで落ち着いた雰囲気が漂っている。 

 空調が効き、快適な空間の中で書きたいことを書き、読みたい本を読み、見たいテレビを見ている。外はかなり冷え込んできているのだろう。もう12月半ばだ。風が強く冷たく、だから空が澄み富士山がよく見えるのだ。この状態をどう捉えればいいのだ。

 がんで入院することなどなければ、何の抵抗もなく当然のこととして、今日もたとえ日曜日だとはいえ出勤することになっていただろう。年末の一番忙しい時期だ。恒例のビックサイドでの催事も重なっているだろう。寒さに震えながら朝から出勤し、1日中夜遅くまで仕事だろう。

 病院にいれば快適な空間で好きなことができる。このあまりにもかけ離れた2つの現実の違いは何なのだろうか。埋めることも広げることも出来ない空間が横たわっているだけだ。

 このような空間に安住していると自らの立脚点が曖昧になっていってしまいそうになる。あくまでもがん細胞と死闘を繰り返しているという自らの立脚点を。病院での治療はあくまでもがんとの闘いの継続であり、一時も気を抜けない、どちらかが敗れるまで続く闘いなのだ。

 我々がん患者にとってはがんとの闘いが、自らの一生をかけた、最後の闘いとなるのだ。一切の妥協も許さず、後退すれば敗北するという苛烈な闘いのだ、そしてそれは選択の余地のない自らの運命として科せられてきているものなのだ。

 『詩人トロッキー』
 1969年3月、栗田勇が三一書房から『詩人トロッキー』という本を出した。この本はコヨアカンを舞台とした戯曲で巻末に筆者による「詩人トロッキー」と題した比較的長い解説がある。本を整理していた時偶然この古い本が出てきた。 
 
 この中に政治的に闘おうとしている女性の台詞がある。この内容はあくまでも政治的闘いに対する彼女の心構えや意思を表明したものだが、闘いは政治にのみあるのではない。ここに書かれた表現ががん患者の現状と心構え表すものとつながるものであると思うので引用してみたい。自らのがん患者としての在り方に沿って少し文書を付け加えてみようと思う。
 
 「いつも一番卑しいものが現実主義の仮面をかぶって出てくるのだ。現実は主義なんてもんじゃない。主義とは意見を持つことなんだ。意見とは現実を違う方向(ガンからの生還)に向けようとする人間の祈りなのだよ。

 私は未来のために闘っている。しかしそれは現実をよりよく生きるためなのだ。未来は一人の人間によって生きられた真実しか信じない。あたしたちの闘い(がんとの闘い)は、ただきれいな夢で現実を覆うことではないわ。たとえ悲惨な現実でもそれを見つめて、その中に人間らしく生きる力の源を汲み取ること・・・。
 
 政治というのは(がんとの闘い)、確かに我々にとってあの冷酷で無慈悲でどんな手段も選ばない、殺すか殺されるかの闘いだ。しかしそれも本当は巨大な運命の流れの中で宿命に屈しないで少しでも宿命を変えていこうとする人生の努力のうちの一こまなんだよ。」


 政治的闘い、革命のための戦い、未来のための闘い、これらの闘いへの意思は、我々のガンとの闘いへの意思と全く別物ではない。世界を変革する意思と、自らの命を救おうとする意思とどちらが優れていか等比較することは出来ない。我々ガン患者にとってはガンと闘う以外に選択の余地は全く存在していない。ただ全力を挙げて闘う以外ないのである。あくまでも自らの生命を守るために、そして人々の生命を救うために。

 『死者との誓い』
 ローレンス・ブロック『死者との誓い』の中に、「困難な時を体験すれば、そのことから何かしら得る所があるものだ。続けなければならない。続けよう。続けよう。」とあった。困難な体験から、何かを得なければとは思う。逆境は人を強くする。それに立ち向かう意思と力を蓄えガンを克服していく、そういった生き方を前向きに選択していこう。

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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がん治療とは長く細い道を辿ら
なければならない。その先に希
望があると信じながら。

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