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石田衣良 『美丘』

8月25日(水)
石田衣良の作品は、『池袋ウエストゲートパーク』が面白く、その他の本も何冊か読んだ。今回目にしたのは、『美丘』という本だ。作品の紹介には次のように書かれていた。「強烈な個性と奔放な行動力を持ち、嵐のようなエネルギーをもった美丘。残された命を見つめ、限りある生を全力で走り抜けた美丘。魂を燃やしつくす恋人たちを描いた作品」

41e_convert_20100825222541.jpg主人公太一と美丘
ありがちなパターンだなと思いながらも、短い小説だったので読み始めた。主人公太一が、恋人美丘と過ごした13ケ月の回想録である。彼女が生きていたという事実を証言するために最期まで彼女を見守り続ける太一の記録である。

美丘は子供の時の交通事故の手術で移植された硬膜から、クロイツフェルト=ヤコブ病に感染した。この病気には治療法はない。10年、20年の潜伏期間後いつ発症するか分からない。一度発症したら、歩行障害から始まり、3ケ月位で、行動異常、性格変化、視覚異常、認知症が急速に進行し、やがては自発運動はほとんどなくなり、全身衰弱、呼吸麻痺、肺炎などで死亡する。

死期を悟り、それまでの限られた命を精一杯燃焼させるというパターンの映画や小説が蔓延している中で、この小説ではどう展開されているのだろうか。

太一と美丘の会話

どうしてきみはそんなに強いんだ。
みんなより少しだけ、わたしのほうが目を覚ましているから。
どういう意味。
永遠に生きられるなんてかん違いして、今日を無駄にしないって意味。
そんなことできるはずがない。ブッダの昔から、みんなそんなことをいってきた。今日を生涯最後の1日だと思って生きろなんてさ。でも、実際それができた人間なんて僕の知る限りゼロだ。
そういう哲学みたいなこといわないでくれる。わたしはただ生きるために生きている

美丘について太一の言葉

きみは流れ星が燃え尽きるように、命を削って輝いたのだ。きみはなにをしているときでも、必死で自分自身でいようとしただけなのだ。

きみは真実を知っていた。命は火ついた導火線で、ためらっている余裕など本来誰にもないはずなのだ

美丘の言葉
わたしひとりだけが気づいているんだ。生きていることは奇跡で、永遠に続くものじゃない。ここにいる皆だって、命には終りがあるってことは頭では分っている。でも、心と身体の底から、いのちの素晴らしさや限界を感じているのはわたしだけ。

(太一に対して)もっと自由になった方がいいんだよ。いつもまわりに無理やりあわせているでしょう。そういうのやめにしちゃえば、もっと自由になって、もっと自分らしくなって、わたしの分までいきいきと生きちゃいなよ。

 石田衣良の恋愛小説は始めて読んだが、あまりにもオーソドックスで面白みがない。またいつ死を迎えるか分からない美丘の行動パターンがあまりにも理想像に当てはめすぎているような気がする。死を目前にした人間はこうでなければいけないといった作者の生死感があまりにも露骨に出すぎていてついていけない。

余命を宣告されたがん患者、難病の患者は、今生きていることを絶えず自覚せざるを得ない。しかしだからといって「残された時間を精一杯生きるべきだ」と他人から言われたくはない。残された時間をどう生きるかは各人の勝手である。

大体死を宣告された人が主人公の物語は「残された命を見つめ、限りある生を全力で生き抜いた」といったワンパターンなのだ。あらゆる人がいる。生き方も様々であり、どのように死を迎えるかは千差万別だ。それなのに、この手の物語や映画は死に対する心構えについて1つの価値観を押し付けようとしている。それがどうも気に入らない。

石田衣良の小説も、言っていることはもっともな事も多いがこういったパターンから逃れることは出来なかった様だ。生と死の問題は、全ての人にとってまさに最も個別的な問題であり、死に対してどういう態度をとるかは決してパターン化されるものではない。

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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がん治療とは長く細い道を辿ら
なければならない。その先に希
望があると信じながら。

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