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石田衣良 『池袋ウエストゲートパークⅩ』北口アイドル・アンダーグラウンド

1月13日(木)
41MFed_convert_20110113223238.jpg 『池袋ウエストゲートパーク』は、果物屋の息子で普段は「池袋西口公園」脇の西1番街の果物屋で仕入れや店番をしている真島 誠(マコト)を主人公とする短編小説集である。マコトは正義感が強く色々な相談が持ち込まれ、その解決のため奮闘する。“池袋のトラブルシューター”とも呼ばれる。

このシリーズは7巻まで読んだが、いつの間にか10巻まで出ていた。10巻が手に入ったので読み始めた。4つの物語で構成されているが、その中で「北口アイドル・アンダーグランド」という話を取り上げてみる。

この物語でのマコトへの依頼者は、池袋北口の地下ライブハウスで歌っているイナミという地下アイドルである。ストーカーに追い掛け回されているので守って欲しいという依頼である。池袋の小劇場やライブハウスはほとんど雑居ビルの地下にあるから、そこで歌っている地域限定のマイナーアイドルを地下アイドルと呼ぶそうだ。

この中主人公が直面する人間関係の難しさや危うさ、夢を追いかけることへの不安や迷いなどを通しながら、最終的に自分の生き方を確認していくその過程がなかなか感動的である。

「歌とかアイドルとかで食っていけるの」
「生活していくのにぎりぎりかな。足りない時は日雇いのアルバイトをすることもあるけどたいへんなこともある。でも好きな歌を歌って、応援してもらえて、CDまで買ってもらって、それで生活できるんだからやっぱりすごいことだよ。私は特に美人でも可愛くもないけど歌は大好きだから」(文藝春秋単行本p105)

イナミの話は自分がおかれている状況をマイナスごと受け止めて、さらにまえむきになれる見事な覚悟を示していた。マコトはイナミのそういった生き方に共感し依頼を引き受ける。確かにイナミもマコトも自分の現状への迷いや不安を抱えていないわけではない。しかし今の生き方を運命として受け止め、それを肯定的に生き抜いていくことに意味があるのだ。

「いい年をして、いつまでアイドルになる夢なんか追いかけているんだろうなあって、自分でもちょっと不思議になるよ」
「それなら、おれだって似たようなんものかもしれない。いつまでおれはこうして、素人探偵のようなお遊びを続けていくのだろうか。」(P117)

自分の生き方を肯定することは決して簡単なことではない。著者は日本の現状を次のように語る「政権交代とか、地方分権とか、公務員制度改革とか、いまやおおきなストーリーは根腐されてしまった。そこには青春の志とか坂本龍馬も入る余地はないもう日本の青春期は20年前に終ったのだ」。

こういった現状の中で、食うために低賃金で仕事をし、その日暮らしの多くの若者が自分の生き方を肯定するなどということは不可能に近い。しかし著者はこのような世の中でも生きがいを見出していける余地は残されているのだという事を、イナミとマコトの生き方を示すことによって読者に訴えているのである。

「なあ夢をあきらめたら、本当に楽になれるのかな? 逆にどうしてあの時もう少しがんばらなかったのか、あとで後悔するんじゃないかな。あんたはまだ全力をつかい切っていないから、夢のほうがあんたに期待して離してくれないんだよ」
それはおれ自身への言葉でもあるようだった。今やっていることの先には何も待っていないのは分っているが、こうして生きていくしか、おれには選択肢がないのだ。誰もがどうにもならない自分の運命を持って生まれてくる。(P118)

10巻の「プライド」の章に「負けるな、このうんざりするような世界にも、自分の心にも負けるな」「闘いを投げずに、あきらめなければ、いつか必ずこちらの攻撃の番が回ってくる」という言葉が書かれていたが、それは「池袋ウエストゲートパーク」全体に貫くマコトの生き方であり、著者の確信なのだろう。

「北口アイドル・アンダーグランド」の最後に、事件を解決した後、イナミとマコトは話をする場面がある。その中で2人は自分の生き方の意味を互いに再確認する。どのような生き方でもそれを前向きに受け止め、肯定し、全身全霊を傾けて取り組めば最高の生き方となるという事を2人とも改めて自覚することが出来たのである。

「メジャーになるのも素敵かもしれないけど、私は池袋の地下アイドルでいいんだよ。この街のためにわたしにもできることがある、それが何だかうれしいんだ」
イナミの言葉はそのまま、オレの今回の事件で感じたことだった。こうして人さまのトラブルに余計な頭を突っ込み、解決できたり、出来なかったりする。そんなふうにして、年をとっていくのもいいものだ。(P142)

テーマ : 思ったこと・感じたこと
ジャンル : 日記

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がん治療とは長く細い道を辿ら
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